クイズ番組で山姥の調伏をした日から、約1週間後―――。

あの日のことは、ただのセットの不備があったための事故とされた。


妖怪が出たことは、一切知られてない。


あのアイドルたちも、あたしのことは黙っていてくれるようだ。



「杏ちゃん! これ運んでくれる?」

「はーい」


バイト仲間の万里さんに頼まれて、料理をお客さんのところへ運ぶ。

今日は金曜日で、ただ今バイト中なのです。


「失礼します」


そう言って、客間の襖を開けた。


料理をテーブルに並べる。


「お待たせしました。焼き鳥の盛り合わせと枝豆です」


メニューを言って、お客さんの顔を見ると……その方は常連の……。


「杏樹ちゃんじゃないか!」

「小田さん、こんばんは」


小田正宗さんだった。


以前、接客をした時に、『ぜひ息子の嫁になってくれ』と言ってくれた人。


滝本の会社に勤めていて、どこの部署かは忘れたけど、部長さんらしい。

名刺をもらって見た時にびっくりしたんだよね。


陸と一緒に仕事してる人だとわかったからさ。