隣を歩く陸が問いかけてきた。


「門にも、玄関にも鍵かけてないだろ?」

「うん」

「強盗とか入ったらどうするんだよ」


ヤツの考えに、フフッと笑う。


「うち、陰陽師でしょ? じいちゃんがね、結界を張ってるんだ。家の人間が許可しない限りは、入れないようになってるの」

「マジ?」

「うん。だから、鍵とかはかけないの」


初めて知った陸は、じいちゃんのすごさにびっくりしてた。


こんな芸当ができるのも、一族の中ではじいちゃんだけ。

そんなことを話していたら、自宅の広い庭を抜けて、玄関まで着く。


――ガチャ……


「ただいま~」


なんも考えずに、扉を開けた瞬間。


「杏樹~?」

「ヒイッ!」


玄関先で待っていたのは、仁王立ちのじいちゃん。


お顔が、ものすごく怒っておられます!!

とっさに、陸の後ろに隠れた。


「こら杏樹っ! 陸くんに隠れるんじゃない!」


じいちゃんの怒鳴る声が、家中に響きそうだ。


――ヒョコッ……

ちょっとだけ、陸の背中から顔を出す。


「杏樹~! また陸くんに迷惑をかけよって!」


「ご、ごめんなさい」


怒られないと思っていたのに、怒られた……。


自分の体を陸の背に隠した。


この晩、じいちゃんの説教が朝まで続いたのは言うまでもない。