いつもの閻魔大王じゃなくてね。

パッと自分でも笑顔になるのがわかる。

――ギュッ


「陸ありがとう! じいちゃんに怒られずに済む!!」


喜びのあまり、ヤツの首に腕をまわして抱き着いた。

やった!

怖い怖い雷は落ちな~い!!


「ハア……まったく、よくこの状況で抱き着いてくるよな」


ウッキウキの中で、陸の呟きが聞こえる。


「ほえ?」


首に回していた腕を解き、ヤツの顔を覗き込んだ。


「ま、それがお前だな。ほら、シャワー浴びて来い。メシ食ってから帰ろうぜ」

「う、うん」


よくはわからなかったけど、陸に勧められるまま浴室へ向かった。




午後10時過ぎ―――。

遅めの夕食をファミレスで済ませて、陸に家まで送ってもらう。

それも、もうあとちょっとだ。


家の前まで来た時……。


――カシャ


小さかったけど、カメラのシャッター音が聞こえた。


「え?」


陸と手を繋いだまま、その場に立ち止って周りを見渡す。


「杏、どうした?」

「なんか……カメラの音、聞こえなかった?」


隣にいるヤツを見上げて問いかけた。


「いや?」

「そう……」


あたしの空耳かな?

うん、空耳だよね。

こんな時間に写真を撮る人っていないよね。

気にしないことにして、家の門に手をかけた。


――カシャン


鍵の開いている門をふたりでくぐり、玄関を目指す。

すると。


「なぁ、前から聞きたかったんだけどさ」

「ん?」

「なんでお前の家って鍵かけねーの?」