間違ったことは言ってない。

コイツは、意識なしの危ない体だ。

本人は寝てればいいと言うが、以前。


杏のじいちゃんにこっそりと、治癒の術について聞いたことがある。


『普通の術に比べて、身体の疲労が激しいのじゃ。一気に使い過ぎると、体を壊す』と言われた。


『酷い時は、命にかかわることもある』とも。



それだけ代償を伴う術だから、生半可の術者には扱えないらしく。


一族の中でも霊力が桁外れな、杏とじいちゃんしか体得していないという。


それがあるから、さっきは怒鳴ってやめさせようとしたんだ。


でも、杏は自分で決めたら曲げねーから……ヤツらに力を貸すことについて堪えたのに。


そんな杏を、普通の病院みたいに考えやがって。



「今回は許してやる、だが。今度またそんな口利いたら……お前ら業界から1日で消してやる」


――ドンッ


至近距離で睨んだままそう告げると、掴んでいた胸ぐらを離し、ヤツを壁にぶつけた。



「いって……」


雷がぶつかった背中の痛みに顔をしかめる。


「しゃ、社長!」

「ホテルとれたか」


Junkieのヤツらに背を向け、車に乗り込んだ。


「は、はいっ!!」

「なら行くぞ」


返事をした北原が後部座席のドアを閉め、助席に乗り込む。



呆然とするヤツらを置いて、車はゆっくりと滑るように走り出した―――――。