地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー

残ったのは、5人。

でも、ひとりの山姥は毒で片腕が溶けていた。

実質、倒せばいいのは4人だ。


あたしに調伏された仲間を周りの山姥たちは、さらなる恨みに変える。

奴らから出る妖気がカゲロウのようにゆらゆらと揺れ始めた。


「おのれ―――!」


山姥は、元は美しい老婆だと言うけど。

その面影は一切ない奴らだね。


一気に片づけようっと。

今まで動かなかった場所から、初めて足を一歩踏み出す。


それも小さく呪文を何度も唱えながら。


「天蓬、天内、天衝、天輔、天禽、天心、天柱、天任、天英」

「逃げる気か?」


あたしが動いた理由を『怖くなって逃げるため』だと勘違いした山姥が、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべた。


ある1点を目がけて一気に走りながら、ポケットから出した呪符を炎で燃やす。

灰になった呪符をある点に足でこすりつけた。


そしてまた別の方向に向かって走る。


「杏樹……何やってんだ?」


陸たちのいる場所の傍を通った時、そんな会長の呟きが聞こえた。


山姥たちは、ニヤニヤと笑っていて、いつ仕留めようかと目をギラギラとさせている。


そんなことしてちゃ、終わりだよ。


あたしが術を仕掛けたことにも気づかない奴らに、口元だけで笑みを作った。


そして、元の位置に戻る。


――トンッ


軽くジャンプをして、セットの高いところに上った。