「やっていいよ」
陸に向かって、許可の言葉を言った。
「縛」
小さく、独り言を呟くような大きさの声で陸が唱えた瞬間。
――ビシッ!!
山姥たちの体の自由が奪われ、その場で固まる。
ちょうど、あたしたちを取り囲んで……あと3メートルという距離で。
「「「「「「なにっ!?」」」」」」
怒りに満ちた奴らの表情に、驚愕という色が混じり始めた。
今だ!
「みんな逃げてっ!」
――パタパタッ
あたしは柚莉を。
西国くんは零ちゃんを。
会長はちーちゃんを連れて……山姥たちに囲まれた中から抜け出す。
みんなを山姥たちからなるべく離れた、スタジオの隅へ連れて行った。
現実についてこれていないjunkieのメンバーも、手を引いて、柚莉たちと同じところへ連れて行く。
奴らの中に残ったのは、陸ひとりのみ。
「杏樹っ! 滝本くんは!?」
Junkieメンバーを連れて来たあたしに向かって、わめくように言う。
「平気だよ、アイツに奴らは指一本触れられないから」
「でもっ! 滝本くんは術なんて修めてないでしょ……!」
それでも、心配だというように……陸を見る柚莉。
「もう動くから。大丈夫」
フフッと笑って、ポケットから黒い手甲を取り出した。
ゆっくりとみんながいる場所から反対方向へ向かって歩き、スタジオ内にあったセットの上に座って……奴らの様子を眺めた。


