山姥たちの目が、さらに獲物を捕らえようと光り始めた。


「おや? この中に、もっと美味い肉を持つ人間がいるようだな」


大きな口から出る、赤い舌が唇を舐める。

奴らの視線が、ある一点に集まった。


きたきた。

そうそう、それでいいの。


その視線は―――……陸に向かっている。


「お前、おいらたちが怖くねえのか」


あたしたちの真正面にいた山姥が、陸にそう問い掛けた。


「別に? お前らなんて、生まれた時から見慣れてる」


ポケットに手を突っ込んだまま陸がサラリと答える。


「ほお、お前見鬼か」

「そうだけど?」


陸の霊力の強さに気付いた山姥たちが、ニヤニヤと笑い始めた。

標的を定めたかな。


「アハハ……これはこれは、この娘たち以外にも収穫がありそうじゃな」


奴のガラガラの声が、耳につく。


「お前らに捕まる気はさらさらねえよ」


挑発するように、フッと鼻で笑いながら告げた陸。

――ビリッ

山姥たちの妖気が、一段と強くなる。

陸の言葉に怒った証拠だ。

そう思った次の瞬間。

――ヒュッ!


「生意気な口を塞いでやる!」


Blossomのメンバー、ちーちゃんを抱えたまま、山姥がこちらに向かってきた。


その鋭く伸びた爪を伸ばして。


今だ―――。



「禁!」



陸の口から、山姥を跳ね返すための呪文が吐き出される。



「ぐわっ……!?」



――ドサッ

呪文は、みごとヤツに命中し、山姥の手からちーちゃんが離れた。


まわりの山姥たちは、まさか陸が術を遣えるとは思ってもいなかったようで驚いた表情だ。