心の中でため息をつく。

せっかくいい気分で、blossomのメンバーを見ていたのに。

もう……今日は泣いて、陸に怒られて、散々な日だと落ち込んでいたのに、生のblossomが見れたからいい日だと思ったのにさ。

そう簡単にはいかないらしい。


「いったい何人いるんですか……」

このスタジオ内に、多数の妖気を感じる。

いや、妖怪を“人”と数えるのはどうかと思うけどさ。

生ぬるい、ねとーッとしたような粘り気のある発酵食品を肌に塗られているような気分。

本当に気持ち悪い。


目を閉じて意識を妖気に集中させた。

幸い、まだ番組出演者の紹介とかで、スタジオ内はにぎわっている。

あたしひとりが目を閉じていようが、誰もわからない。


――キンッ……!


高い音が聞こえて、妖気をたどると、5、6人くらいいることがわかった。

ハァ……あたしついてない。

この番組の収録中に妖怪たちが暴れだしてくれないことを祈る。

だって、あたし準備とかしてないもん。

呪符もないし、護符もない。

こんなところで暴れられたら、陸たちを護る必要もあるし、アイドルやタレントさんも護らなきゃいけない。

闘って、負ける気はしないけど……陸たちに手を出されないようにするのはちょっとキツイかも。


あ~ぁ。こんなことなら、ちゃんと道具も持ってくるべきだった。

手で印を組んで、防護壁を作るしかないかな?

う~ん、それしかないよね。


妖怪たちが大物でないことを祈る!!


心の中で、頼みこむように手を合わせた。


その後。


「では、スペシャル版、クイズバトル始まります!!」


司会者の一言で、収録が本格的に始まったのだった。



そして、あたしの願いは届かないことになる……。