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「ハァ……ハァ……」


カーテンで閉め切られた窓からは、一切の光が入らない。

部屋の中にある小さな電気スタンドだけが、室内を照らしている。

そして、部屋の壁一面に明かりで浮かぶ上がっているモノがあった。


「本当に杏樹はかわいいなぁ……」

部屋の中にいるひとりの男は、壁に貼られている杏樹の写真に頬を付ける。

満面の笑みで笑っている写真の中の彼女に、口づけた。


「キミは、俺だけのものだよ?」

壁一面の様々な写真にそう語りかける男。

パソコンデスクの上には、神崎杏樹に関する資料が置かれている。


ーーパサッ……

「高校時代は、かぐや姫って呼ばれていたんだ?杏樹に相応しいな」


身長、体重、生年月日、血液型。

書かれている情報は、すべて高校時代のもの。

男は、今よりも少しだけ幼い表情の杏樹の写真を静かに見つめた。


「ホントにキレイだよ、杏樹。滝本なんかには、もったいないくらいだ」


スッと、杏樹の写真から目を離して、陸が写っている写真を見る。

「こんな男、キミには相応しくないよ。外見だけの男だろう?滝本なんかじゃ、杏樹は幸せになれない。キミを幸せにできるのは、俺のみだ……」

ーービリッ……

陸が写っている写真を縦に破り捨てた。

片手で握りつぶす。


「杏樹、もうすぐキミは俺のものになるから。俺が迎えに行くのを待っていてね?」


微笑みを浮かべて、杏樹の写真にそう呟くと、もう一度口づけた。



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