ヤツの癖なのかは、知らないけど……。

「陸ってさ、よくあたしの髪で手遊びするね?」


後頭部から背中にかけて、髪を梳かれながら告げる。

「まーな」

ヤツはクスッと笑うと、あたしの頭のてっぺんに唇をつけた。


「……なんか落ち着くから」

「ふ〜ん?そーなんだ……」


だから、いつも梳いてるんだね。

されるがまま……しばらくそうしていたら、「杏」と名前を呼ばれる。


額を胸板から離して、目線を合わせた。

暗闇に慣れたから、表情がわかる。

どうしたんだろう?


「……さっきの質問。答えて?」


質問?あぁ……あれね?


ヤツの顔へと、手を滑らせて……両手で包み込んだ。

「杏?」


不思議そうな表情の陸に、優しく唇を重ねる。



「……タカラモノね。たっくさんあるけど、1番は陸だよ」


ニコッと微笑んで……返した。