地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー

雑鬼が完全に見えなくなってから、視線を試着室内にいる杏へ向ける。


「お前さ、術者なら力使って払えばいいだろ?」

「うぅ……だって悪さしていたわけじゃないし。簡単に調伏とかは出来ないよ」

背中を俺に向けたままそう返された。

悪さねぇ……?

俺にとっては、ほとんど裸のお前に少しでも触ったら、十分調伏すべき悪さになるんだが。


「……でも、助かった。陸ありがと」


雑鬼を追い払ったことにお礼を言われる。

同時に、背中を向けていた杏が、こちらを振り向いた。


えっ…………。


ピキッと体が固まる。

目の前の彼女に、目がくぎづけになった。


「ねぇ……これどうかな?」


小首を横に傾げて尋ねられる。


おいおいおいおい……それはヤバイだろ。

どうかなって……。

ヤバイとしか言いようがない。


「……杏……それは……」


目の前の光景に、言葉が詰まった。