「杏姉〜〜あ〜そ〜ぼ〜」
バレーボールくらいの大きさで、球体の上に一本の角。
目はひとつで、口は見当たらない。
……どこから声を出しているのか?という疑問が浮かぶ。
「うぅ〜〜ムリィ〜〜ちょっと離れ……」
杏は、後ろからうなじに抱き着いている雑鬼を床へ振り払おうとしていた。
しかし、ヤツはコイツと遊びたいらしく……しがみついて離れない。
こんな繁華街にも雑鬼っていんだな……。
俺の頭の中に、変な感心が生まれる。
「……離れ……あんっ……」
雑鬼がうなじに抱き着いているせいか……杏はヤツを振り落とす際に感じたらしい。
こんなヤツで、お前は感じるのかよ?
……ムカつく、雑鬼だな。
──ガシッ!
そう思った時には、もう雑鬼をわしづかみしていた。
──ボトッ
そして床に落とす。
「オワッ!?何すんだよ」
俺の行動に驚いたヤツは、ひとつしかない目を見開いて、こっちを見た。
「……杏は俺とデート中。邪魔すんな」
ギロリと上から睨みつける。
「ひぃッ!コワッ!!」
俺のオーラを感じ取ったのか……それだけ言うと一目散に雑鬼は逃げ出した。


