地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー

遅くねぇか?

たった着替えるだけだろ?

出て来ないアイツを不審に思い、試着室のカーテンに手をかける。

「杏?開けるぞ?」

一言かけて、カーテンを横に引いた。



……。

目の前の光景に、俺の体が固まる。


「もう……いやぁ〜」

小さく杏の口から嘆きの言葉が聞こえてきた。


しかしながら、他のヤツらが俺と同じ場所に立って、これを見ても……たぶん体が固まることはないだろ。

いや……目の前にいるグラドル並のプロポーションの体を見たら、固まるかもしれないが。


今の光景を理解するには、“視えて”いなきゃならない。


「……何やってんだ」


この言葉は、水着に着替えた杏に向けて言ったワケじゃない。

彼女のうなじ辺りに抱き着いて、じゃれてコイツで遊んでいる小さな……ヤツにだ。


……小さな……雑鬼に。