と、その前に。

「……離れて」

「いーじゃん。別に」

「あたし、バイト中!」

体に巻き付いてる腕を引きはがそうとしたが。

「離せぇ〜!!」

「ヤダ」

がっしりと捕まえられていて、逃げることができない。

殴ってもいいかな!?いや、殴りたい!


「あたしが、陸の仕事中に、こんな邪魔したことある!?」

「ねーな」

「だったら離してよ。今から5秒内に!守らなかったら、一瞬で冥土に送ってあげる」

呑気に笑ってる陸に、最後のチャンスを与える。

すぐに術の発動のできる印を作った右手を見せて。

「5」

カウントダウンを始めたら、抱きしめられていた腕の力が緩んだ。

フンッ……わかればいいの。

コイツには、印を見せるのが1番効くね。

今度も使おうっと!


ふと、万里さんを見たら……さらに顔が真っ赤になっていた。

このバカ殿様の変態ぶりは、彼女には毒だ。

「万里さん」

「あ、うん?」

「紹介しますね、みんな高校からの友達です。んで、このバカが……一応彼氏です」

陸の服をつまんで引っ張り、告げる。


「バカって……杏、今度覚えとけよ」と閻魔大王の声が聞こえて来たが、気にしないようにした。


「杏ちゃんの彼氏って、超イケメンなのねッ」

その後。

ひとり……興奮気味の万里さんを置いて、その日のバイトをこなした。