ん? んん??


「ご優待券なんて、すごいものをもらったねぇ〜? こういうの高いんじゃない?」


は……!?

コイツ……怒ってない?


杏はニコニコした顔で、紙切れを見ている。


いや、普通……彼氏がキャバクラの券を持ってたら、不快にならねーか?


杏が俺から奪い取った封筒に入っていたのは……先日、取引先の社長からもらった“高級キャバクラご優待券”。

40代手前の男性社長だったが、「こういうのにも興味がおありでしょう」と言って渡してきた。


……正直、興味なかったが。

だから、今の今まで忘れてたんだ。

化粧が厚い女たちに囲まれるとか、気分が悪くなるだけだ。


「陸、これ使って行くの?」

「行くわけねーだろ」

「ふぅ〜ん」


ヒラヒラと券を揺らして、俺を見てくる杏。

なんだか、彼氏として試されてるような気がした。