彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編



男の名前は、小田哲夫。


年は二十二歳。身長一七〇センチ前後、小太りで黒縁のメガネをかけている。


肩の辺りまで伸ばしたと言うよりは、伸びてしまったという感じの暗めの茶髪で、一見 “オタク風”。


容貌は、『小太りのカエル』と言った感じだ――。


職業は、フリーター。


瀬戸亜佐美とは、ネットの「出会い系サイト」 で知り合い意気投合し亜佐美の家出、と言うありがちな経路を辿った。


……と、周囲は見ている。


と言うのも、亜佐美がどちらかというと“グレていた”部類に入り、素行があまりかんばしくなかったのと、PCに残っていた二人のメールのやりとりから、事のあらましが分かったからだった――。


捜索の依頼人は亜佐美の両親。


探偵を雇ってまで娘を捜したい両親の気持ちは、十五歳という亜佐美の年齢を考えれば無理もないだろう。


亜佐美の友人関連から、このアパートを割り出して今に至る。


後は実際この目で、彼女がここにいる確認を取り、それを両親に報告すればこの仕事は終わる。


亜佐美が両親の元に帰るかどうかは、一介の探偵の関知する領分ではない。……のだが。