「ここに犯人がいるんですか!?」


裏町の路地奥にある、古びた木造二階建ての安アパート。


各階に八部屋あり、その北面、階段側のアパート入り口が見通せる場所で、人待ち顔を装いながら監視を始めた良介に、興味津々のゆうりの質問が始まった。


「別に、犯人という訳じゃない。ちょっと家出娘捜しでね。瀬戸亜佐美という十五歳の女の子だ」


幽霊相手に守秘義務もないだろうと思い、良介はありのままを教える。


「あのアパートのどこかにいるんですか?」


「ああ。二階の西側の角部屋。二〇八号室に男といるはずだ……。それより」


「はい?」


「付いてくるのは構わないが、話しかけるのはなるべく遠慮してくれ。これじゃまるで独り言を呟く変なおじさんだ」


くすくすくす。


「分かりました。でも、私に手伝えることがあったら、遠慮なく言って下さいね。部屋の中の様子とか、見て来られますよ?」


ゆうりの言葉に良介の表情が輝く。


「そうか! 君なら部屋の中に彼女がいるか、確認できるな!」