日付は、後少しで変わろうとしていた。
病院特有の消毒薬の匂いが鼻孔をくすぐる、灯りの落ちた静かな病室の中。
良介は、頭を掻きながらベットサイドに歩み寄った。
「よう。助手君。大変だったんだってな……。悪かったな、すぐに来れなくて。色々あってな……」
そこに座っている人物に、少し照れたような眼差しを向けて呟く。
「そうよ。一時は、心音が聞こえなくなって、危なかったんだからね!」
そう言って笑うその女性の顔は、神々しいくらい慈愛に満ちて、輝いていた――。
ここは、助手君こと良介の妻・奈々の入院している病院の一室。
ベットには、奈々に抱かれた新生児がスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。



