彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編



後は、電話の向こうの警察が、少しでも早く来てくれるのを祈るしかなかった。


あまり、間に合いそうもないな……。


良介は、心の中で休業中の助手に詫びた。


悪い……。


お前の戻ってくる職場、なくなりそうだ――。


「それじゃ、さようならぁ~」


小田二号がナイフを振り上げる。


「ダメェッッ――!!」


そのナイフと良介の間に、ゆうりが飛び込んでくる。


「なっ!?」

とっさに、良介がゆうりの体を引き寄せ抱え込む。


幽霊だとか、刺されても死なないんだとか、そんな理屈は考えられなかった。


ただ、良介の本能がゆうりを庇ったのだ――。


良介の視界が、白一色に染まる。


妙だな。


こんな時は、ブラック・アウトするもんじゃないのか……?