彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編



「降参だ。俺の負けだ。好きにしろ」


肩をすくめて投げやりに呟く。


「冥土の土産に教えてくれないか?」


「何かなぁ?」


勝ち誇ったように、小田二号の薄い口の端が吊り上がっていく。


良介は、内心怒りで沸騰しそうな感情を押し殺て、気弱そうに質問を続けた。


「アパートにいた女の子二人の死体は、何処にあるんだ?」


良介の内心を知ってか知らずか、小田二号は楽しげに「アンタの、足の下~」と、ニヤニヤと目尻を下げる。


思い出しているのだ。


楽しくて仕方がないのだろう。


それが腐液のように滲み出している。


狂気のオーラが、その場の全てを浸食していきそうだった。