「さあ。亜佐美を助けよう」
「危ないっ!!」
ゆうりの声に振り向いた良介の肩に、鋭い痛みが走った。
パタパタと地面に赤い点が散る――。
「甘いねぇ。俺たちは、可愛い双子ちゃんだったのでした~」
うけけと勘に障る笑い声をあげて、もう一人の小田がいた。
その右手で、さっき良介が蹴り飛ばしたサバイバルナイフが、血で濡れて怪しく光っていた。
そして左手には、ぐったりとした瀬戸亜佐美を抱えている。彼女には、助けを求める体力すら残っていないようだった。
「動かないでねぇ、お・じ・さん。亜佐美ちゃんが、死んじゃうよ~」
「お前ら、まさか三つ子とか言うんじやないだろうな……」
まるで、妖怪でも相手にしているような疲労感を覚えながら、良介が呻くように呟く。
だがその手には、警察へ繋がったままの携帯が握られていた。
この僻地まで警察が来るのに、どのくらい掛かるだろうか――。



