彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編



亜佐美は、力なく繋がれた柱に寄りかかっている。


見るからに衰弱しきっているのが分かった。小田の姿は死角になっているのか、見えない。


良介がぎゅっと、唇を噛んだ。


こう言うのは我慢ならない、虫酸が走る。


変態野郎がっ!


お前の悪運もこれまでだ!


覚悟しろ、小田っ!


良介は、マナーモードにしてある携帯を取り出すと、警察へダイヤルしようとフタをあける。


その時だった。


「何をしているのかな~? お・じ・さん!」


ニワトリを連想させる甲高い声が後ろから響いてきた。


「きゃぁっ!」


悲鳴を上げたゆうりの方に、楽しげにサバイバルナイフを構えた小田が、ちらりと視線を向ける――。


こいつ――。


ゆうりが見えてるのか!?