彼女の言うことには【探偵柿沼良介の多難な1日】短編



ゆうりが小田の部屋に入ると、荒れた部屋の隅に女の子の霊体が二人いて、寄り添いしくしくと泣いていたのだと言う。


「どうしたの? どうしてここで泣いているの?」


尋ねると、「小田哲夫に殺されて埋められた。家に帰りたい」それだけを繰り返しやはり、しくしく泣くだけだった――。


そこへ、小田が帰って来た。


とたんに二人の少女の霊は怯え出し、ゆうりがいくらなだめても何も答えてくれなくなった、のだそうだ。


「警察に届けた方が、いいんじゃないですか?」


どうした物か考えあぐねていた良介に、ゆうりが心配げに声を掛ける。


「無理だ――。証拠がなさすぎる。死体でも出れば別だが、『幽霊がそう言ってました』じゃ、警察は動かない」


例え、もっともらしい理由を付けて今ここに警察を呼んだとしても、『証拠』が無ければ意味がない。


小田が殺人犯で、それも二人も殺しているとなると、亜佐美も最初からそのターゲットとして狙われた可能性が高い。


これはもはや、単なる家出娘捜しのレベルではなくなっていた。


【連続女子高生殺人魔!!】


週刊誌の一面が目に浮かぶようだ。