「姫様ぁ! 勝手に外へ出てはならないと!」
遠くから聞こえる男の声。酷く急いだ様子で走って来る中年男性。シェラはずいぶんと不機嫌そうに頬を膨らませている。
「もうばれっちゃったか。次はダミーに誰か置いておこうかな……」
そう呟く彼女を見、やっと彼女の元へ着いた紳士的な服装を着こなす中年男性は溜め息をついた。
「外へは出ても構いません。ですからちゃんと、わたくしに一言仰ってください」
「だってそうすると、ノエルやシヴェルまで来るでしょう? そんなの窮屈で嫌よ」
「そう仰らずに。護衛も我々の役目ですので」
「ふーんだ、いいも~ん。またね」
男に手を取られ歩き出したシェラは後ろを振り向き、笑顔で空いた手を振った。それを見ても無視をするユェ。
「あの少年とお知り合いですか?」
「ううん、初めて会ったの」
「そうでしたか。いいお友達になれると良いですな」
去り行く二人の後ろ姿を眺め、ユェは別の方向へと歩み出した。