退屈な授業が終わり、休み時間に入る。
授業が終わると同時に騒ぎ出す教室の音で目を覚ます。
「起きた」
と言って笑う明日香と、カコ。
いつの間に居たの?と聞くと、わかんないと返す。
「とりあえず話、しよっか」
そそくさとあたしを連れて行く明日香に聞く。
「あれ、カコは?」
「いいの」

なんでだよ、と思いながら遠ざかっていくカコに言う。
「すぐ帰ってくるよ」
「安心して」
と言うけれど、不安に満ちた顔をしてしまう。
まるで犬みたいな、ひどく寂しげな顔だった。

「・・・で、こんなとこに連れて来て何の話」
うざったいくらいの青空の中、連れてこられたのは屋上。
電車やマンションがそびえたつ、殺風景としか言いようがない景色。
「だーかーら、かこっちゃんの話」
「カコが、何」
「さっき未来が呼び出されてすぐに、クラスの女子たちがかこっちゃんに言ったわけ」

「・・・なんて?」
フェンスに寄りかかって空を見る。
青と白の、当たり前の空。
「『未来さんとあんまり仲良くしないでください!』って」
「・・・何それ」
めんどくさい、と思って携帯を取り出す。
「そしたらかこっちゃん、さびしそーな顔して」
犬みたいな?と言うと、頷く明日香。
「それであたしが一言言ったら、不満そーに帰ってったワケ」

「かこっちゃん、同世代の女の子苦手そう」
「・・・中学の頃、学校行ってなかったんだってさ」
何それ、と問いかける明日香。
「体育の駒田が言ってた」
携帯のカメラで、空を撮る。
パシャ、というシャッター音と、画面に広がる青空。

「かこっちゃんも癒えない傷を連れてるんだね」
「そうだね」
あたしが笑うと、同じように明日香も笑った。
「まぁ話はそれだけ!教室戻ろうか」
スカートを叩いて、それと同時に砂ぼこりが舞う。

階段を降り、教室へ向かう廊下を歩いていると、人がたくさん集まっていた。
「どったの」
あたしが同じクラスの綾矢に問いかけると、騒がしい教室内よりも大きな声で言う。
「のんが転校生に目つけたみたい」
その言葉に慌てて教室へ入るあたし達。
そこには、涙を流しているカコと、あいつの姿。
それを取り囲むように円を作る、生徒の姿。

「カコ・・・?」

ここから、全てが始まった。