「おい、優ー!早くしろー!!」
あたしは窓を開けて、
「うっさい!今やってるから、せかさないでよー!」
と、返事をした。
咲口優は、あたしの名前だ。
柊秀は、あたしの幼なじみで、好きな人。
でも秀は、3年前の気まずいあの告白を忘れたように接してくれる。
とても、優しい人。
あたしは支度を整えると、家を出た。


「入学式かー、、、、、」
そう、今日は高校の入学式。
あたしと秀は同じ学校に行けることになった。
「秀は、勉強がんばってたもんねー」
ちょっとイヤミを込めて言うと、
「お前は元から頭いいもんなぁ」
と、少しすねた。
「アンタが勉強ほっといて部活に専念するからでしょ?」
「高校なんて、推薦で行こうとしてたからな」
秀はピースサインをした。
「バカじゃないの」
あたしはため息をついた。
可愛くない言葉で隠した、あたしの本心。
ピースサインの隣には、太陽より眩しい笑顔。
その笑顔は、どう表現すればいいのか分からなかった。
「あ、学校見える!」
秀が指を指した。
「あー!本当だっ」
あたしは指の先を見た。
坂の上にある、大きくて綺麗な学校。
「行くよっ」
あたしはその坂を駆け上がった。