母さんが忙しい時は、僕がなつこを迎えに行く。今日も後ろにカゴのついた自転車をこいで、なつこを迎えに行った。

「小学生なのにえらいわね。さすがお兄ちゃん!」

なつこの友達のお母さん達が僕のことを誉める。

「母さん、今日は忙しいですから。」

僕はちょっと照れくさかった。
しばらくすると、なつこが出てきた。

「お兄ちゃ~ん!」

そう言って僕のところにかけよってくる。しかし、急になつこはピタリと止まり、僕とは違う方向を見た。なつこの視線の先には、他の子供達がお母さんと手を繋いで歩いていた。なつこはしばらくボーっとそれを見ていた。

「帰るぞ。」

そう言ってなつこを自転車の後ろに乗せ、僕は自転車をこぎだした。信号で止まったところで、僕はなつこに聞いてみた。

「なつこ、お母さんに迎えに来てもらいたいか?」

「うん。」

なつこは素直に答えた。

続けて僕は聞いた。

「お兄ちゃんじゃ、ダメか?」

「ううん。お兄ちゃんでもいっ。」

僕は自転車を飛ばした。