僕達は、医者に母さんのベッドまで案内された。母さんは頭に包帯を巻き、足や手が吊り上げられていた。僕は無理矢理足を動かすと、母さんのベッドにかけよった。


そして、大声で叫んだ。


「母さん!ねぇ母さん起きてよぉ!」


ひとつ、ふたつ、


「なつこはどうしたんだよぉ!」


「やめろ!翔太やめるんだ!」


「母さん起きてよぉ!なつこはどうしたんだよぉ!」


みっつ、よっつ、


「やめろ翔太!」


もう全部、理解はしていた。でも納得は出来ない。どうしても納得は出来なかった。


「なつこは、なつこはどうしたんだよぉ!母さん起きろよぉ!」


いつつ、むっつ、


「翔太!」

父さんが僕を強く抱きしめた。


「俺は兄貴だから、兄貴だからなんだって我慢するよ!だから、なつこは、なつこは!」


ななつ、やっつ、ここのつ、とう、

数えても、数えても、数えきれない思い出と、叫んでも、叫んでも、どうしようもない現実が、むなしく、悲しく、いつまでも響いた。