気が付けば、医者が僕達の前に立っていた。監督やバアちゃんも側にいた。

「麗子と、なつこは、どうなったんですか?」

父さんが、おそるおそる、医者に聞いた。

「奥さんは、命に別状はなく、今はベッドで寝ております。しかし、娘さんは…息を引きとりました。申し訳ございません。」

医者は深々と頭を下げた。
父さんは、その場に崩れ落ちた。

『えっ?』


『娘さんは、息を引きとった?』


『なつこが、死んだ?』


そう思った瞬間、僕はなつことの思い出を、次々と思い出した。

『ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とう。』

十まで数えても数えきれない。

『じゅういち、じゅうに…』

数えても数えても、数えきれない。

『さんじゅうさん、さんじゅうし…』

数えても、数えても、数えきれない。なつことの思い出が次々と浮かんでくる。

「なんなんだよぉ、やめろよぉ!!」

涙が、ボタボタと落ちた。