「翔太！」

少年団で練習をしていると、突然監督が僕を呼び止めた。

「はい！」

『何かしたかな？』僕はビビりながらも監督に近よって行った。

「すぐに帰る支度をしろ。他の者はしばらく練習を続けてろっ！」
監督の顔は真剣だった。わけがわからなかったが、急いで支度をしてまた監督の元に向かった。

「準備出来たか？」

「はい。」

「よし、じゃあ行くぞ。」

わけのわからないまま、監督の車の助手席に乗った。運転をしながら、監督が僕に言う。
「翔太。いいか、落ち着いて聞けよ。さっき、お前のお母さんと妹が…」

「はい。」

『母さんとなつこがどうしたんだ？』
監督は少しだまっていた。そして、グッと唾を飲むとこう言った。
「お母さんと妹が、交通事故にあった。」

「ホント…ですか？」
『えっ？』僕は信じることが出来なかった。突然の出来事に、なにがなんなのかわからない。監督はまただまっていた。

「ホント…なんですか？」

僕はまた同じことを聞いた。

「ああ、ホントだ。」

監督はとても真面目な顔でこたえた。

「それで、今、お前の家に親戚の方が待っている。とりあえず、お前の家に行くからな。」

「はい。」

反射的に返事が出たが、やはり状況はまったくわからなかった。母さんとなつこが交通事故？ホントなのか？本当にそうなのか？わけがわからなかった。