しばらく放っておくと、

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

またなつこが呼んできた。

「今度はなんだ?」

そう言って振り向くと、なつこの手にはタンポポがいっぱい、あふれそうな程つまれていた。

「タンポポの花束!お兄ちゃんにあげる!」

「ニカッ」と笑うなつこのプレゼントが、とてもうれしかった。

「よし、ちょっと見てろ。」

僕は地面からタンポポを引っこ抜くとクキだけにして、それでしばって一つにしてみせた。

「ほら、これでバラバラになんないだろ。」

「すご~い。」

なつこはとても感心していた。
家に帰るまでも、帰ったあとも、なつこはとてもうれしそうに常に笑っていた。僕もその笑顔を見て、満足だった。
でも、なつこはその日から、笑わなくなった。