ムカツク!ムカツク!僕はとても腹が立ってゲーム機をけとばした。そして、そのままベッドに寝転がった。しばらくすると、トントン、ドアをノックする音がした。

「翔太、入るぞ。」

いつのまにか、父さんが帰ってきていた。

「壊されちゃったんだってな、これ。」

大事そうに父さんはゲーム機をさすった。

「なつこはワガママすぎるよ。謝りもしないし。」

僕は父さんに言った。

「兄貴ってのは、色々大変だよな。洋子おばさんいるだろ?俺もアイツのワガママに何度付き合わされたことか。」

「洋子おばさんもワガママだったの?」

僕はあんなに優しい洋子おばさんがワガママだったなんて、不思議に思った。

「ああ、俺の物をすぐ欲しがるし、貸したら貸したでどっか置いてくるし、今のなつこそっくりだよ。」

「ホントに?」

「ああ、ホントだ。」

僕はなんとなく天井を眺めた。

「怒る気持ちはわかる。でもなぁ、年も離れてるし、やっぱりお前は兄貴なんだ。だから我慢しなきゃいけないし、怒り方にも問題があるだろ?」
父さんの言葉に、僕はムッとした。

「父さんまでそんなこと言うのかよ。」

しかし、父さんはこう言った。

「わかってるよ。翔太の気持ちはよくわかる。でも、だからって5才の妹を殴っちゃダメじゃないか?」

僕は少し考えた。そして、

「殴ったのは悪かったと思ってるよ…。」

ボソリと言った。

「そうか。ならいいんだ。」

そう言って父さんは部屋を出ようとした。

「妹ってズルイなぁ。」
僕はまた、ボソリと言った。

「ああ、ズルイさ。」

ドアを開けて父さんは出ていく。しかし、開けたまま父さんはそこに立っていた。