瀬名君を見送ったあと、俺は再び帰る準備を始めた。 早く果歩に会いたくて。 この手で抱きしめたくて。 あせる気持ちを押さえつつ、最後のカルテを整理しようとした時だった。 「あの……まだ、いいですか?」 背後からか細い声が聞こえ、俺はハッと手を止めた。 またか… こんな時に限ってまたしても急患。 あー…と苦笑いも浮かべつつも俺は医者だ。 患者に俺の私情は関係ない。 これが俺の選んだ道……と、諦めゆっくり振り向こうとした瞬間 「…陽生……」 かけられた声に動きが止まる。