「悪いのは全部私なの!責めるなら私を責めて!これ以上彼に何も言わないで!」
その言葉と一緒に再び俺の手が振り払われる。
冷たく。
おもいっきり振り払われた手に、一瞬にして周りの空気が静かになった。
「恋人だからって、全てを話せるわけじゃないもん」
「果……」
「私にだって言えないことの一つや二つぐらいあるんだもん」
目を見開いた俺と重なるように果歩が俺から顔をそらす。
重ぐるしくなっていく空気。
……けど、そんな俺達を見かねてか、少年がすぐに何かを言いかけようとして、その言葉は背後から聞こえた声にかき消されてしまった。
「涼太」
見るとそこには50代ぐらいの白いコックコートを着た女性。
たぶん彼の母親。
きっと着替える間もなく慌ててここに来たのだろう。
俺に気づき、丁寧に挨拶をされた時にとても甘い匂いがした。



