先に彼が降りて、
「あたしも降りなきゃ」
なんて荷物なんかをもたもたしてる間に、助手席のドアが開いた。
さっきからあたし、何もできてないんだけど!
「すいませんっ…」
「なんで謝んのさ」
暗くてよく見えないけど、多分少し苦笑いをしてる。
歩き始めて、
バックを持ってないことに違和感を感じる。
…と同時に
彼の右手がそれを持っていることに気付く。
なんか、すごい。
大人だって言ったらそれまでだけど
こんなの
ほんとに優しくないと
できない気がする。
そんなことを考えながら、黙って背中を追いかけた。

