月の恋人




「…なんか、すっげー、スッキリした。」


うーん、とでも言いそうに
翔くんが両腕を伸ばして大きく“伸び”をする。



「…翔、くん。」



「ん?」




「……しょう、くん…。」


自分の言いたいことが
うまく、まとまらない。


「ごめんね」?

「ありがとう」?

「バカ!」?




…どれでもあって

どれでも、なかった。


心の中に渦巻く感情は
うまく言葉にならなくて

ただ、名前を呼んだ。



「…しょうくん…。」