月の恋人



「…翔くん……」



「去年の秋さ、俺に手紙くれたじゃん、陽菜ちゃん。」


………てがみ?



「…え、と………市民祭りの舞台の時の?」



去年は翔くんの住むN市が市制50年とかで、記念行事がたくさんあって。


その中で
市内の小中学校総出で演じる舞台劇の、主役に大抜擢されたのが、翔くんで。


悟おじいちゃんがすごくすごく嬉しそうに、我が家へ招待券を持ってきたのを、よく覚えてる。



「そ。俺がつるっぱげにした時の。」


そうだった。
あの舞台でナントカ法師っていうお坊さんの役だった翔くんは、潔く、丸刈りにしてたんだ。



でも
翔くんてば頭の形が綺麗だから

それが、妙に似合ってた。



でも

おじちゃんに渡した
手紙が……何だっていうの?