月の恋人



無花果の木の下で
幹に寄り添うように

あたし達は、しばらく
抱き合ったままの格好で
無言だった



時折、夜風が足元を抜けていく。

木立が、音を立てる。


夜の闇に同化しそうな
静かで、穏やかな時間。





――――――…



どのくらい、そうしていたのか


きっと時間にしたら
2、3分の事なんだろうけど


すごく、長い時間のように感じた。










「…陽菜ちゃん、落ち着いた?……ごめん、俺が悪い。……カッコ悪ッ……」



静寂を破ったのは

翔くんの声だった。