月の恋人




「…あー、もう…――」




ほんとに、
そう言ったのか

もっと違う言葉だったのか

正しくは、わからない





翔くんが
何か言いながら

髪を撫でていた手で
あたしを引き寄せて


ふんわり


あたしの身体を
両腕で包み込んだから。




「…………っ……」




え、え、え


待って、待って、待って


あたし…抱きしめられてる?






「………ごめん…泣かすつもりじゃ、なかったのにな…」



翔くんは
まるで小さな子供をあやすように、あたしの背中を、ぽん、ぽん、と軽く叩く