月の恋人



「おばあちゃんが、ちゃんと手入れしてるから。」

あたしと翔くんの
おばあちゃん。


おじいちゃんが亡くなってからも
週に一度はここへ来て

ずっと、この庭を
かいがいしくお世話している


真面目で、優しい
あたしたちの、おばあちゃん。



翔くんが
実を付けている
無花果の木を見上げる



「……陽菜ちゃんの、大好物だったよね…。」



あたしに背中を向けたまま
クスッと、笑う気配。



「…よく覚えてるね、そんなこと。」