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練習が終わった後の帰り道、タケルを残して駅まで向かう途中、ジョージが言った。



「失声症―…ってことは、何か原因があるんだろ?心当たりはないのか?」


「いや―…原因は、もう分かってるんだ。」


「は?」


ジョージがマヌケな声を出す。





「どういう、ことだ?原因がわかってるなら―…」


「ああ。ただ―…俺が、それを認めたくなかっただけで。」


「―…認めたくない?」


「…アイツに負けるのが、悔しかっただけだ。」






そう――…だけど。


今は、負けてやるよ。

大切な、俺たちのお姫様のために。



今は…、陽菜ちゃんの方が大切だから。




だけど―…もう少し、大人になったら。

必ず、奪い返すから。




「覚悟しとけよ―…涼。」