月の恋人




何か考えるような目をして、あたしを見るタケルさんに、嫌な予感がした。

だって、何か企んでるような顔をしていたから。



「――… ねぇ、陽菜ちゃん。もう一回マイウェイ、歌ってくれない?」

「えっ?」



どうして――…?


「む、無理ですっ……」

突然そんな事言われても翔くんの前で歌うなんて、無理だよ……




「…… 歌って。 陽菜ちゃんの知りたい事と、翔がずっと悩んでた事は、それで全て解決すると思うから。」

「―――――… え?」



言われていることの意味が、全く理解できなかった。


見ると、翔くんも怪訝な顔をしていた。



あたし達が黙ってしまったその隙に
タケルさんは強引に鍵盤を叩き始めてしまう。



そして、一旦音を紡ぎ始めてしまえば

それを、中断させることなんて、できなかった―――――…