月の恋人









「はい、 とりあえずコレ飲んで。」



白い液体の入ったカップから
湯気が立ち上っている。

ホットミルク、かな。温かそう。


ゆらゆらと揺れる白い蒸気を目の端に映しながら、大男を見つめた。





――― あたし、どうしてこの人に逆らえないんだろう…





『うわっ、びしょ濡れじゃん! とりあえず、俺んとこおいで!』




翔くんよりも更に淡い
白に近い金髪

顔や耳に沢山空いたピアス

威圧感のある身長



見た目はかなり怪しいのに、どうしてか…

信用してもいい何かがある気がして

言われるがまま
近くにあるという
この人の家に来てしまった。





―――…不思議な、人だ。




「おい、そんな目で見つめんなよ… 不思議なコだね、ったく…」



ちょうど思っていたことをそのまま返されて

絶妙なタイミングに思わず笑ってしまった。



「………… ヤバイ。」


「…… え?…」



「………いや、なんでも。それ飲んだら、シャワー使いな。着替え、置いとくから。」


「いえっ、そんなの… 」


「いーから!言うとおりにしろよ。このまま帰したら、俺が翔に怒られる。」





“翔”くん…



――この人なら、知ってるかも、しれない…