月の恋人










嵐が、来た。



窓を叩く雨の音と それを震わせる雷鳴の轟き

低い気圧と、高い湿度のせいで

ねっとりした空気が肌にまとわりついて、気持ち悪い。





居心地の悪さを感じながら、もう一度、再生ボタンを押した。




『もしもし?涼?そこにいないの??―――…』



苛立つくらい正確に、機械はさっきと同じメッセージを再生する。




“翔くんから、連絡あった?”


“今夜も帰らないようなら、警察に…”




――… 警察って… どういうこと?




“陽菜には知らせないで…”




――― どうして?




あたしの知らないところで、何かが起きている。
大変な、何かが。



今夜も帰らない…ってどういうこと?


まさか… 昨日から
翔くんは、うちに帰ってない―――?



そんな――― バカなこと―…