月の恋人





掴んだ服の中に、昨日涼が着ていたTシャツがあった。

あたしがずっとしがみついてたからか、首周りの生地が伸びてしまっている。

そんな場合じゃないのに
Tシャツを抱えた胸が、ぎゅうって、苦しくなった。



――――… 嘘つき。



そばにいてやるからって

甘えろって



そう、言ったのは、涼じゃない―…



そこに涼はいないのに

Tシャツに縋り付きたくなった。








“何かがおかしい”と感じたのは、サンルームで濡れた洗濯ものを干し直していた時。





―――――… ?




なんだろう、何か―…


何か、おかしい。







――――――…






“直感は、信じた方が良い”。


この日あたしが学んだことは、まさにそれで。




リビングに戻って留守番電話の録音を再生した時、その直感が間違っていなかった事を、思い知った。