月の恋人




人気のない昼間のネオン街は、異様な雰囲気を醸し出していた。



夜の狂乱の名残か
地面には割れたビール瓶が転がっている。

そして
誰かの、吐いた跡。


色褪せた看板。
饐(ス)えた匂い。




駅前の大通はあんなに賑やかだったのに、通り一本中に入っただけで、ここはまるで別世界のように、暗く澱んでいる。



同じ太陽が照らしているのに

世界は、どうしてこうも色を変えるのだろう。






…場違いなところに迷い込んでしまったのは、分かる。


でも



………まさか、あんな事になるなんて、思ってもみなかった。