二月、もうすぐ桜の季節がやって来る。


自転車をこげば、風が冷たくて、すごく寒いけど、バレンタインにもらった綾の手編みのマフラーがあるから、心は温かい。


もうすぐ綾の家。


いつものように、家の前で待つ綾。


どんなに家の中で待つように言っても、外で待つ綾。

少しでも早く俺に会いたいんだって。


相変わらずの小悪魔。


俺の胸をキュンキュンさせる。


「おはよう綾。」


「おはよう、じゃ、行ってきまーす。」


俺にあいさつして、玄関から中にいる母親に声をかける綾。


するといつも母親が玄関に現れる。


「毎日送迎付きなんて、ホントに綾はいい彼氏捕まえたわね。
立川くん、よろしくね。
見離さないでね。」


「もう、お母さんたら、いってくるね。」


「はいはい。」


「いってきます。」


俺はきっちり頭を下げて、あいさつをする。


綾の家族には、いい印象持ってもらいたい。


綾を自転車の後ろに乗せて、駅まで二人乗りをしていく。


綾の腕が腰に巻き付く。


毎日なのに、なれない。


ドキドキしなくなる日は、くるのだろうか。