今日も右から2番目の窓に急ぐ。私の指定席。
私の視界に映るのはひまわりみたいな彼。
うちの学校は3年生だけ校舎が違う。
だから私は毎日窓から4組の教室を眺めている。
先輩を好きになって2年。これが私の日課になっていた。

なんだかんだで時はすぎる。
今日はとうとう卒業式。
この窓にくるのもきっと最後。

もう少し長い間見ていたかったな…
あぁ…ほんとに最後なんだ。
そう思うと溢れる涙が止まらない。
"第一ボタンください"
ちゃんと言えるかなぁ?

1、2年生は先輩たちを送り出すため
玄関から正門にかけてのスロープに並ぶ。
うちの伝統行事。
毎年人気者の先輩は学ランのボタンもシャツのボタンもない。
先輩人気じゃなきゃいいけど。
先輩たちが出てきた。
大好きな大好きな彼を探す。


あ…いた。
よし!!!!がんばろう。落ち着け自分。
大好きな先輩に伝えなきゃ。


「先輩!!!彼女いますよね?だから第一ボタンくれませんか?」


先生たちが卒業生を誘導していて
さすがにこれじゃボタンどころじゃない。
どうしよう…


先輩はにっこり頷いてからこう言った。


「正門で待っててくれる?」


私はもう、なにがなんだかわからなかった。
ただほんの少し皆より先輩といれることがうれしかった。

卒業生も解散して、在校生はクラブに行く。
私も片付けが残ってる。
だけど先輩との約束だから。
正門に急いだ。先輩の姿はない。
どこ行っちゃったんだろ。

さすがに顧問にも怒られる時間になった。
しかたない。戻るしかないか。
私は涙を拭いて歩きだした。


「ボタンっ!残しといたよ!」


ボタンのない学ランを着た先輩が
私のもとに走ってきてくれた。






私の指定席