酷い頭痛、耳鳴り、吐き気その中で不思議と進む足。
様々な生物が死に腐っていく土、濁った魔力が結晶化して岩に草木に、こびりつく。


風も生温く肌を撫でた。
厚い雲が光を遮り、黒い雨を落とす。



溢れる魔力に枯れかけた世界。



誰のせいでもなく、戦に狂い魔力の恐ろしさを忘れた全ての者の罪。


「いいのかい?」


隣を歩く少年が問う。
彼の姿も、外套から出た見える部分が僅かにおかしい。
白銀の鱗が剥がれかけてカサカサと音を立てていた。

「仕方ないだろ……」


答えた。
青年に見えるが、汚れた外套と痩せて骨が浮いているため老けて見える。



「君は人間だ、わざわざ行かなくても我々のようなものを犠牲にすればいい」


「……絶滅危惧種のくせに」


「命あるものはいつか滅びるさ、我々だけではない君もね?」



フン、と青年が鼻で笑う。

「行きたくて行くわけじゃない、他にいなかったからだ」


「その良心がお前を殺す……」



牙が覗く唇からは呪うような言葉が響いた。