「へ?…あ、何でもないよ」




陽菜は、少しはや歩きで男に近付いた。



「やっぱり、まだ辛い?」



「大丈夫だよ」



「それならいいんけどさ、辛いなら遠慮なく言っていいから」



「うん」




男は、「よろしい」と言いながら、微笑んだ。



「あ…ねぇ」



口を開いたのは陽菜だった。



「ん?なーに?」



「貴方の名前は?」



「あれ?知らなかったっけ?」



陽菜は、申し訳なさそうにゆっくりと頷いて男を見る。



「俺は、爽だよ。三浦爽」



「三浦、君」



「なに?」



「……ありがと。」



爽は、嬉しそうに微笑んで「どういたしまして」と言った。。